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   『つよい』

         投稿者 : 僕


 僕より少しばかり頭のいい佐藤君によると、今のこの世界にはモノが少ないらしい。
 大昔にはもっとたくさんのモノがあったそうだが、大きな爆発があって、それ以来世界には僕と佐藤君と、灰色の瓦礫と、プラッショしかなくなったのだ。
 プラッショというのは、僕と同じくらいの大きさをしていて、二本の足で歩く生物だ。味は不味いが、弱くて、食べるところが多いので、僕は基本的にプラッショを食べて生きている。
 佐藤君は、プラッショを食べない。佐藤君は何も食べなくても生きていられるそうだ。佐藤君はすごいなぁと思う。僕は食べなくては餓死してしまうので、仕方なくプラッショを食べている。
 僕は、プラッショを仕留めるときは、基本的に30cm程の中が空洞になった棒を使う。この棒は軽くて、硬い。素早く振り回せるので、僕はこれでプラッショの頭を容赦なく殴る。殴る。殴る。
 プラッショが頭を守ったら体を殴る。体を守ったら頭を殴る。プラッショが諦めて、守ることを辞めても、僕はプラッショが動かなくなるまで殴る。
 「知ってるんだろ?」
 「何が?」
 佐藤君と最近よくする会話だ。佐藤君はよく、「知ってるんだろ?」と僕に尋ねてくるが、僕が「何が?」と聞くと、それ以降は黙って口を聞いてくれなくなる。
 「知ってるんだろ?何が?知ってるんだろ?何が?」
 僕は佐藤君としか会話ができないので、佐藤君との会話は僕の知ってる中で一番楽しい娯楽だった。
 それ以外のときはこうして、佐藤君との会話を繰り返しているのだ。
 「知ってるんだろ?何が?知ってるんだろ?何が?」
 こうしていると、佐藤君が「何が?」といったのか、僕が「知っているんだろ?」と尋ねたのかがはっきりしなくなってくる。感覚があやふやになっていく。それがまた面白いのだ。
 僕は面白いからケタケタと笑った。
「知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?」
 棒を振り回しながら、徘徊する。道々にプラッショが吊るされている。頭を紐で縛って、高いところから吊り下がっている。
 吊るされたプラッショの肉は腐っているので、僕は絶対に食べない。
「知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?」
 僕は面白いので、またケタケタと笑った。
 
 知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?知っているんだろ?何が?


 しばらく歩くと沢山のプラッショを見つけた。プラッショは珍しく、綺麗な緑色の服を着ていた。それは僕の着ている銀色のジャンバーより、かっちりとしていた。
 先頭を歩くプラッショが僕を指さした。
 すると、すぐに大きな音がして、お腹がとても熱くなった。

 おなかを触ると赤い液が手に付いた。
「あはははは」
 僕が笑って地面にうずくまると、先頭のプラッショが僕に近づいてきた。
「何がおかしい」
「僕の血は赤いんだ。てっきり緑色だと思ってたんだ」
 鼻血を出した時みたいに、喉の奥から血の味がした。
 
 プラッショはうつむいたあとに、
「とどめをさしてやれ」
 といった。
 大きな音が鳴ったあと、僕は無くなった。
 


<作品のテーマ>

可哀想な人。
   投稿者  : 土門
一読いたしました。
書き出しの一文に惹かれて読み始めると、この特殊な世界観の面白さに気付きました。
舞台となる設定部分が、話が多方向に膨らみそうなものだなぁと感じました。

しかしながら、それゆえに切り込み足りないのかな、という印象を受けました。
もう少しこの世界について佐藤君から聞いたり、「知っているんだろ?」の意味とか(これは最後の部分で表現されていたのでしょうか、だとしたら読み取り不足ですいません。ただ、そこで表現するにしても最後に佐藤君の台詞が必要な気がします。)

また、途中の佐藤君との会話部分がどちらかというとホラーに近い書き方なのに対して、主人公の心持ちがどうもコメディに近い書き方だったので、どうも話の方向性がはっきりと定まりきれていないかのような感覚もありました。

色々な展開を作り出せる、いわば原石のような設定ですから、どうかここから様々に展開されてみたらいいかなぁと思いました。

読ませていただき、ありがとうございました。
   投稿日 : 2017/01/19 18:24
   投稿者  : 
>土門さん
一応佐藤は主人公の妄想の中の人で、主人公が自分の心の奥深くに封じ込めた人としての理性です。
プラッショは人間のことで、それ以外に食べるものがない主人公はそれをあえてプラッショと呼んでごまかしながら、自分で殺した人間を食べて生きています。最後に主人公は、この世界で、戦争後自警団的な存在になった軍人達に撃たれて死にます。

展開については、あまり考えてなかったです。基本適当に思いつくままに書いてるので。
   投稿日 : 2017/01/19 23:34
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