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   『血だらけのロリポップ』

         投稿者 : てこてこ


 床に引かれた白いチョークの跡。
 その丸い頭頂部には、赤黒い血の跡がくっきりと広がっている。

「・・・これは・・・殺人事件だわん!」
「そうじゃないと僕ら呼ばれませんよ先輩」
 シマリス巡査は、冷静にブルドック先輩(巡査長)にツッコミを入れた。

 事件が起こったのは昨夜未明。
 何者かがマンションのベランダより被害者の部屋に侵入。背後から鈍器の様な物で被害者を撲殺した。凶器は未だ見つかっていないので、犯人が証拠隠滅の為に持ち去った可能性が高いとされている。

「そして、容疑者がこの3匹・・・」

 一匹目。隣の住人、うさぎ。第一発見者でもある。被害者とは騒音問題で長い間揉めていた。
「一見おどおどしているが、その殺意は計り知れないのかもしれないわん」
 二匹目。マンションの大家、コンドル。被害者が家賃を滞納しまくっているので頭を悩ませていた。
「毛が抜けてしまうまで悩むなんて、相当だわん」
 三匹目。友人の猫。被害者とは唯一無二の親友だが、最近何か喧嘩をしていたらしい。
「喧嘩の拍子に勢い余ったのかもしれないわん」

 三匹ともに殺害動機はある。沈黙の空気の中、シマリス巡査はブルドック先輩の言葉を待った。
「ひとまず、昨夜未明、何をしていたか話していって貰うわん」
 深刻な顔をしてブルドック先輩は事情聴取を始めた。
「そ、その時間は、いつも寝てるうさ。き、昨日は、珍しく静かだったから、ぐ、ぐっすり眠っていたうさ」
 落ち着きがない様子で話す隣の住人うさぎ。
「俺は昼行性なんでね、夜はいつも眠っているさ。それに鳥目だから夜は行動出来ないよ」
 面倒臭そうに話す大家コンドル。
「他の二匹と一緒だにゃん。そもそも、そんな時間にわざわざ遊びに来ないにゃん」
 そう話す友人の猫の手には血だらけのロリポップ。

「犯人いた!!!」

 シマリス巡査は思わず叫んだ。
「何、他にも容疑者がいるのかわん!」
 何事かと言わんばかりにブルドック先輩はシマリス巡査に問いかける。
「いやいやいや、先輩、思いっきり凶器らしき物持っている奴いますよ!」
「何!?」
 ブルドック先輩はすぐさま容疑者の三匹をまじまじと眺め、大きく目を見開くと、
「・・・・・・そうか! 大家コンドルがその鋭いくちばしで被害者の脳天を突き刺したのだわん!」
「違います!」
「そうだわん、そもそも鳥類は夜全く目が見えていないと勘違いされているが、本当は普通に見えているんだわん! どうしてこんな嘘に気づけなかったんだわん!」
「違います! っていうか、見えてるんだ、知らなかった!」
 シマリス巡査は半ば呆れながらも、ブルドック先輩を説得する事にした。
「ほら、もっと怪しい奴いるでしょう?」

「そうか!」
 我に返ったかの様にブルドック先輩はシマリス巡査の方を見る。やっと気づいたか、と言わんばかりにシマリス巡査は頷いた。
「犯人は現場に戻ってくると言う! つまり、犯人は第一発見者の隣の住人うさぎだわん! その頑丈な前歯で被害者の頭蓋を一撃必殺だわん!」
「だから、違いますって!」
「なななな、何を言い出すんだうさ、ししし静かなのが珍しかっただけだから、み、見に行ったらししし死んでたんだうさ!」
 急に犯人扱いされて、隣の住人うさぎは怯えてしまっている。
「怯えているかに見せて、その腹の内は残酷で残忍なんだわん!」
 どやぁという顔で語るブルドック先輩を見て、シマリス巡査は堪忍袋の緒が切れ、
「違うって言ってるでしょう! ほらこれ、友人の猫の手に持ってるの! 凶器でしょう明らかに!」
「そうなのかわん!」
 ブルドック先輩が友人の猫に詰め寄ると、
「これ、お菓子だにゃん」
「そうか! お菓子だそうだ!」
「うっだー!」
 これじゃラチがあかない。シマリス巡査はもう自分が解決する方が早いんじゃないかと考えるのだが、ブルドック先輩の立場を考えると、あまりでしゃばる訳にはいかない。いかないのだが、
(どうしたら気づいてくれるんだよっ!!!)
 シマリス巡査はやきもきしていた。そもそも友人の猫が持っているロリポップをさっさと押収して鑑識に回したら一発なのに、どうしてそうしないのか、理解が出来ないでいる。
「・・・ところで、友人の猫くん、君は何か面白い芸が出来るかわん?」
 友人の猫は不思議そうにするが、
「大した事は出来ないにゃん。強いていうなら、両手をこうあわせて、まんまが出来るにゃん」
 その言葉を聞いて、ブルドック先輩はにやりとした。
「引っかかったな、友人の猫くん、君は一見凶器と思わしき物を持っていないわん・・・」
「持ってますよ!」
「しかし、両手を合わせて振り降ろす事が出来るのなら、何か鈍器の様な物を持てば犯行は可能。普通の大きい物だとその柔らかい肉級が邪魔をして持てないが・・・・・・」
 ブルドック先輩は手を挙げ、真っ直ぐ友人の猫の手元へ振り下ろし、
「その持っているロリポップなら犯行は可能! 君は夜目が効くことを利用し、被害者のベランダから忍び込み、そのロリポップで被害者を撲殺したんだわん!!!」
「初めから見たら分かるでしょう!」
 本日はツッコミしかしていないシマリス巡査。そろそろノドが切れそうである。
「・・・その通りですにゃん」
 あっさりと供述を認め、友人の猫はその場でガクリと崩れ落ちた。
「どうして友人を殺したんだわん」
 ブルドック先輩は友人の猫の傍へ近づき、優しく話しかける。
(もう、ここまでのぐだぐだが無ければ、一瞬で終わってたよなこの事件)
 たくさんの不満を抱えながら、シマリス巡査はこれ以上突っ込まないぞと誓った。

「・・・実は、友人は私の事が好きだったらしいのにゃ。でも、私はコンドルさんの事が好きだったんだにゃん。それを知った友人は、こともあろうかコンドルさんに嫌がらせを始めたんだにゃん。それが許せなかったんだにゃん」
「しかし、殺人は殺人だわん」
「そうだにゃん、だから全てを解明してくれる誰かに見つけて欲しかったんだにゃん」
 初めから分かってるよ、むしろもう出会った瞬間から自首しとけよ! という言葉をシマリス巡査は飲み込んだ。

「全く、こんな被害者の為に人生を棒に振るなんて、大家コンドルが可哀想だわん」

(ん? 何を言っているんだ?)
 シマリス巡査は訝しげな顔をした。犯人が友人の猫なのに、またこの先輩は何を言い出すんだと思ったが、
「大家コンドルも、この友人の猫が好きだったんだわん? だから、わざとバレるような嘘をつき、自分に容疑を移そうとしたんだわん」
「ええ!?」
「にゃんですって!」
 友人の猫もシマリス巡査も驚き、大家コンドルに視線を移した。
「・・・ああ、もっと早く伝えておくべきだったな。でも、もう手遅れた。お前が犯した罪は、俺も一緒に償うよ」
「コンドルさん・・・」
 友人の猫は泣き崩れ、事件は幕を閉じた。

「今回も一件落着だわん!」
「府に落ちないなぁ・・・」

 シマリス巡査は不毛感を身に噛みしめる。このブルドック先輩、鈍感なんだか鋭いんだか、意味が分からない。
「さて、帰るんだわん!」
「いや、犯人連行しましょうよ!」

(・・・本当に、意味が分からない。けど、巡査長と呼ばれるだけあるのかな?)

 シマリス巡査は考える。そして、
(でも、調子に乗られると困るから、絶対巡査長とは呼ばないでおこう)
 心の中で固く誓うのだった。


―END―


<作品のテーマ>

色々とツッコミ所しかない話です。
友人に可愛いお題出してと言ったらタイトルの返事が来ました。可愛いって、何でしょう(笑)

初めは真面目に真剣な警察物を書こうとしましたが、2文目で「あ、これ無理だな」となり、何故かこうなりました。
正直いつものですます調で書きたかったのですが、雰囲気だけでもシリアス…? にしてみました。
推理のすの字も無い話ですが、読んで頂いて有難うございました。
   投稿者  : 古事記のリテナ
読みました。...すごい面白いお話でしたよ(笑) 短かったのであっさり読めましたし。 特に話し方が皆個性的だったので、猫とかうさぎとかごちゃごちゃにならなくて読みやすかったです(^-^)
ところで、被害者はやっぱり猫だったんでしょうか。...サラっと読んだせいか、記憶が曖昧でして。 (...もう一回読んで来ようかな?)
   投稿日 : 2017/05/01 01:19
   投稿者  : てこてこ
古事記のリテナ 様
 ノリとテンションで書ききったので楽しんで頂けて嬉しいです^^
 いつも読み易い文章を心掛けているので、その点も出来ていた様で良かったです。
 被害者、やっぱり気になりますか?(笑) 最初私も誰にしようか考えていたんですけど、最終的に「あ、これ誰が被害者か書く必要無いな」と思って書きませんでした(コラ)
 古事記のリテナさんのご想像にお任せします☆
 それでは感想有難うございました。
   投稿日 : 2017/05/01 16:17
   投稿者  : 
タイトルからしてホラーかと思っていたら、見事に不意打ち食らいました(笑)リテナも言っているように、とても読みやすい作品でした。
結局被害者そっちのけだったような…(( また続きというか、このメンバーでの別のお話も読んでみたいなぁなんて。
結論を言うと面白かったです!猫さん、ご冥福をお祈りします…
   投稿日 : 2017/05/02 21:54
   投稿者  : ひつじ使い
読ませていただきました。
推理小説みたいで楽しかったです。
キャラクターもそれぞれが活き活きしているように感じましたよ。
これからも頑張ってください。
   投稿日 : 2017/05/02 22:45
   投稿者  : ペガサス
拝読いたしました。
可愛くてついくすっと笑いました。
そのままの大きさで脳裏に浮かんできたので、両翼を広げたコンドルを二度見して見上げるリスが浮かんでいました。
ロリポップ、美味しいですよね。
渦巻キャンディーの当たり所の問題で被害が出たぐらいなので、相手側は誰なのか、そこが一番のミステリー!
とても面白い作品でした。
   投稿日 : 2017/05/03 08:10
   投稿者  : てこてこ
零 様
 零さん、冷静に考えましょう(笑)血だらけのロリポップってホラー以前に意味が分からないですよ(自分で言うな)
 「誰が殺したか」を重視してますので、被害者が猫とは限らないくらいに存在が薄いんです。
 いやはや次なんて嬉しいお言葉、流石にこのメンバーはきついですけど、シマリス巡査とブルドック先輩は気が向いたらまた出てくるかもしれません。
 面白いと言って頂けて死んだ被害者も浮かばれます、感想有難うございました^^
   投稿日 : 2017/05/03 21:53
   投稿者  : てこてこ
ひつじ使い 様
 推理小説なんてそんな大それたものじゃないのですが、楽しんで頂けて嬉しいです^^
 いつもキャラにシナリオ進行任せていますので、余す事なく書けていた様で良かったです。
 励ましのお言葉と共に感想有難うございました。
   投稿日 : 2017/05/03 21:54
   投稿者  : てこてこ
ペガサス 様
 確かにコンドルとシマリスの大きさは考えると笑えますね^^
 ロリポップってあの見た目も凄く惹かれます、良いですよね、今回凶器になりましたが(笑)
 ロリポップが硬いのか、被害者が弱いのかの問題ですね。確かに冷静に考えるとそこが一番分かりませんね。猫の腕力で血まみれになる位ですから、余計に難しいですね。
 楽しんで頂けて良かったです。感想有難うございました。
   投稿日 : 2017/05/03 21:54
   投稿者  : 82%
拝読しました。
素直に面白かったです。
すっとストーリーが頭に入り込んで来ました。
短い感想ですが、これからもよろしくお願いします。
   投稿日 : 2017/05/04 18:28
   投稿者  : てこてこ
82% 様
 短くても嬉しいですし、かなりモチベーション上がりますよ^^
 動物のチョイスとかかなり無茶苦茶だったんですが、想像しやすい様で良かったです。
 感想有難うございました。こちらこそよろしくお願いします。
   投稿日 : 2017/05/05 14:56
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